山たび歌たび

短歌でつづる山の感動

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

川の名を五つ渡りて銀色の海に戻りぬ尾瀬沼の雨

翡翠色の水を湛えし暗き瀞ひかり求めてわれは泳ぎぬ

森深き川のほとりで眠るとき高く低くに瀬音の鳴りぬ

一匹の岩魚となりて森深き川を遡上す われは生きてる

はつ夏の渓流に浸す足の先ひかりの底を岩魚がはしる

草原(そうげん)の髪飾りのごと紅き実を池塘に映す岩菖蒲の恋

存在を問うことなかれ稜線にそっと佇む小さき池塘

白神山地(しらかみ)の雨ふる森をくぐりゆく大き命にこころ濡らして

線香とカップ酒持ちて会いに行く君を奪えし一ノ倉沢へ

米子沢を登り終えたる仲間らともらもら茹でしそーめんの味よ

山頂をめざす登山者の窓を横切る駒ケ岳初秋

満ちたりしわれの心の結実か源流にひかる真っ赤な苺

不意に来し冷たき風に立ち止まりすこんと抜けた空を仰ぎぬ

寝しずまる小屋を抜け出し水底の小石のごとく月を見上げる

青春の思い出探しにやって来し男と話す山小屋の夜

水汲みに沢に降りればほんのりと枯草匂う駒ケ岳の秋

谷埋めるデブリを越えて登りゆく春一番の越後駒ケ岳

登りたき山多かれど高峰(たかみね)はむらさき色に薄れゆくなり